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腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは

腰椎椎間板ヘルニアとは

腰椎椎間板ヘルニアとは、背骨の骨と骨の間にある「椎間板」が変形し、一部が飛び出して神経に当たることで、腰や臀部の痛み・しびれを引き起こす病気です。時には下股にまで症状が拡散し、力が入りにくくなったり、重い物を持ち上げる時に痛みが強く出たりすることがあります。

椎間板は、腰の背骨に加わる衝撃を和らげるクッションの役割を担っています。中心部にゼリーのような「髄核」という柔らかい組織があり、その外側を「線維輪」という丈夫な組織が囲っていますが、髄核が線維輪の外に漏れ出し、神経に当たってしまうことで症状を引き起こしているのです。
このように、身体の中の一部が、元々ある場所からはみ出してしまった状態を「ヘルニア」と言います。

腰椎椎間板ヘルニアの原因は?

腰椎椎間板ヘルニアの原因は?

腰椎間板ヘルニアの原因には、環境要因と遺伝要因、加齢によるものがあります。環境要因には、くしゃみや長時間の運転、重いものを持ち上げるなど、腰に負担をかけることが挙げられます。放置しているとさらに神経が圧迫され、慢性的な痛みへと移行してしまいます。
また、タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させ、椎間板周囲に栄養が届きにくくすることで、椎間板の変形を起こしやすくするという研究結果もあります。
遺伝要因には、元々の骨の形や体質が関係しています。加齢によって椎間板のクッション機能が衰え、ずれたり変形したりすることで、引き起こされる場合もあります。

腰椎椎間板ヘルニアの症状チェック

  • 突然足や腰に痛みが起こった
  • 痛みやしびれがある箇所に体重をかけると、症状がひどくなった
  • 安静にしていても症状が治らない
  • お尻から足にかけて痛みやしびれがある
  • 足に力が入りにくい
  • 時々ぎっくり腰になる
  • 階段を登るとき、足が上がりにくい

など

上記の症状に当てはまる場合、腰椎間板ヘルニアの可能性があります。

腰痛椎間板ヘルニアの症状が重度になると、歩く・立つなどの動作が困難となり手術が必要となる場合があります。
危険な信号を見逃さず適切な治療を受ける必要があります。

危険な腰椎椎間板ヘルニアの症状はコチラから

腰椎椎間板ヘルニアの検査・診断

腰椎椎間板ヘルニアの検査・診断腰椎間板ヘルニアの検査・画像診断は、レントゲン、MRI、CTの画像検査で行います。
レントゲンでは、背骨全体の並びやバランス、骨の変形具合などを検査します。MRIでは、レントゲンで見ることができない神経や椎間板の状態を確認します。CTでは、骨の細かな構造を確認することができるので、骨とヘルニアの位置関係を把握していきます。また、患者さんからの問診で、症状や痛む箇所、痛くなったタイミングについて聴取します。
腰椎間板ヘルニアの診断は、症状、診察所見、画像検査の結果を総合して、痛みが本当に腰椎間板ヘルニアによるものなのか判断します。

腰椎椎間板ヘルニアの治療

腰椎間板ヘルニアの治療には、いくつかの種類があります。まずは症状の改善や緩和を目指した保存的治療を行い、それでも改善されない場合は手術を検討します。

運動療法

運動療法は、痛みの軽減や機能の回復を図るために有効な治療法です。痛みがある程度軽くなってから始め、腰部分を伸ばすストレッチや、背筋や腹筋を強化するトレーニングなど満遍なく行います。
これらの運動により、腰椎を支える筋肉を強化し姿勢改善を促すことで、腰への負担を軽減し症状の悪化や再発を防ぐことを目指します。

物理療法

物理療法は、痛みを緩和したり、血行や筋肉・関節の動きを良くしたりするために行います。
具体的には、患部に器具を当て、様々な周波数の微弱な電気を当てる電気療法、80度前後の温かいパックを当てる熱療法、器具で腰を牽引し、神経への圧迫を和らげ、痛みやしびれを緩和させる牽引療法などがあります。
運動療法と合わせて行うことで、より早く痛みの軽減を目指すことができます。

装具療法

装具療法は、腰の負担を軽減し腰椎を安定させるための治療方法で、急性期の痛みに有効です。
主な装具には、コルセットや腰椎バンドがあります。腰部適切に支えたり、正しい姿勢を維持させることで椎間板への負担を軽減し、椎間板機能の回復を目指します。
ただし、症状の緩和を目指すための一時的なサポートとして使用されることが多いため、運動療法と併用することが大切です。

薬物療法

薬物療法では、薬によって痛みの軽減や炎症の抑制を目指します。一般的には、痛みや炎症を軽減する効果を持つ非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用します。また、痛みの神経伝達を抑制するために、鎮痛剤や筋肉の緊張をほぐす筋弛緩剤を使用することもあります。
痛みが強い患者さんには、ステロイドの投与を行うこともあります。薬物療法も痛みを緩和するための一時的な治療であるため、運動療法と併用することが大切です。

注射療法

注射療法では、痛む部分に薬剤を注射することによって痛みの軽減や炎症の抑制を目指します。一般的には、ステロイドを局所注射することで、炎症を軽減し神経圧迫の緩和を目指します。痛みが強い患者さんには、痛む部分の神経付近に麻酔薬を打つブロック注射や硬膜外ブロックなどをすることもあります。
注射療法についても、痛みを一時的に軽減させるためなので、運動療法と併用させることが大切です。

手術療法

手術療法は、症状が重度である場合や他の治療法の効果があまり見られない場合に検討されます。
腰椎間板ヘルニアの手術には、大きく3種類あります。

まず、内視鏡下ヘルニア摘出術です。内視鏡を使って椎間板ヘルニアを摘出する手術で、局所麻酔でできるので20〜40分で終わり、手術当日から歩行開始できます。
次に、経皮的レーザー椎間板減圧術です。椎間板内にレーザーを照射して一部分を蒸発させ縮ませることで、神経の圧迫を弱める手術です。入院日数は1〜2日ですが、保険が適用できないため注意が必要です。
最後に、顕微鏡下椎間板摘出手術です。顕微鏡下で椎間板ヘルニアを摘出する手術で、全身麻酔で切開をするため入院期間は1〜2週間ほどかかりますが、顕微鏡で直接神経や血管を拡大しながら行う手術のため、侵襲性が低いとされています。
また、局所麻酔を行い、椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)という注射を打つ治療方法もあります。椎間板の中にヘルコニアという酵素を含んだ薬剤を注射することで、神経の圧迫を弱めます。

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腰椎椎間板ヘルニアになったらやってはいけないこと

最後に、腰椎間板ヘルニアになった時、やってはいけないことを紹介します。

長時間の安静

痛みがある病気なので、動かさず安静にしていた方が良いと思われがちですが、実は腰痛の治療として安静にすることは推奨されていません。動かさずにいると全身の筋力が落ちてしまい、結果として腰に負担をかける体になってしまいます。痛みが出始めてすぐは安静にしていても大丈夫ですが、3日程度経ったら痛みの範囲内で通常の生活を送るように心がけましょう。なお、数日経過しても痛みで動けないほど症状が辛い場合には、医療機関を受診することを検討しましょう。

喫煙をする

タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があります。これにより、椎間板付近にある毛細血管が収縮してしまうことで、十分な栄養が届かなくなり、椎間板の変形を引き起こす恐れがあります。アメリカの研究により、タバコを1日10本吸う人は、吸わない人に比べて椎間板ヘルニアの発症リスクが20%も上昇したという研究報告がありました。また、喫煙者の間では椎間板ヘルニアの再発率も高いことがわかっています。ヘルニアの悪化を防止するために、禁煙することも検討してみると良いでしょう。

前傾姿勢でものを持つ

腰椎間板ヘルニアの場合、椎間板に負担をかけない姿勢を意識することが重要です。腰は少し反った姿勢が正常とされており、最も悪い姿勢は腰が曲がっている姿勢です。特に前傾姿勢は、椎間板にかかる圧力が増加してしまうとされています。腰椎間板ヘルニアが重症な例を比較すると、骨盤が後ろに倒れ、腰の反り返りが減少している姿勢の患者さんが多いようです。ものを持ち上げるときは、足をしっかりと曲げ、腰を少し反らせるように意識しましょう。そうすると、椎間板にかかるストレスを軽減できるという研究が報告されています。