自律神経に良い食べ物と栄養素とは?おすすめのメニュー例や食習慣も解説
自律神経に良い食べ物と栄養素とは?おすすめのメニュー例や食習慣も解説
執筆者 作業療法士 丹野愛
監修者 整形外科医 森裕展
自律神経のバランスが乱れると心身にさまざまな不調が現れ、痛みに過敏になって慢性的な痛みを引き起こす場合もあります。
本記事では、自律神経に良い影響を与える栄養素や食べ物、食生活のポイントについて詳しく解説します。おすすめの朝食メニューやコンビニで購入できる食べ物も紹介しているので、毎日忙しい方も実践していただきやすい内容です。自律神経を整える食べ物や食事を無理なく習慣化していきましょう。
自律神経に良い影響が期待できる栄養素と食べ物
自律神経に良い影響を与えると考えられる栄養素として、GABA、トリプトファン、コリンエステルなどがあります。それぞれの栄養素と食べ物について説明します。
GABA(γ-アミノ酪酸)
GABAは遊離アミノ酸の一種のγ-アミノ酪酸です。GABAの摂取により自律神経の活動が活性化し、特に副交感神経の活動が活発となることからリラクセーション効果の可能性が示唆されています。1)また血圧の上昇を抑える作用も注目されている食品成分です。1)
GABAは食事として摂取することで、内臓感覚神経を通して脳に作用することが示されています。2)
- 次のような発酵食品や野菜、大豆・大豆製品などにGABAは多く含まれます。
- ・発芽玄米
- ・野菜(ナス・ミニトマト・ジャガイモ・からし菜・かぼちゃ・にんじん・おくら・ピーマンなど)
- ・大豆・大豆製品(大豆もやし、豆腐、おから、黒大豆きな粉、缶詰の煮豆、納豆、味噌など)
- 3),4),5)
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トリプトファン(必須アミノ酸)
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トリプトファンは、体内で合成できない必須アミノ酸です。トリプトファンを多く含む朝食と適切な光環境を組み合わせることで睡眠と覚醒のリズムを調整するメラトニンの分泌が高まると報告されています。睡眠の質が向上すると自律神経の働きが安定しやすくなる可能性があります。6)
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メラトニンは、トリプトファンからセロトニンの合成を経て分泌が促されるホルモンです。セロトニンは精神の安定に関与する神経伝達物質でストレスをやわらげる働きがあります。7)ストレスが緩和されると副交感神経の働きが優位になり、自律神経のバランスが整いやすくなります。
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関連記事:【医師監修】自律神経が乱れる原因とは?3つのストレス対策を解説
トリプトファンは大豆・大豆製品や牛乳・乳製品、穀類、種実類、果物、動物性たんぱく質などに多く含まれています。
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・大豆・大豆製品(小豆、大豆、そら豆、湯葉、納豆、油揚げ、きな粉など)
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・牛乳・乳製品(プロセスチーズ、ヨーグルト、牛乳など)
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・穀類(玄米、オートミール、焼きふなど)
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・種実類(アーモンド、落花生、ごまなど)
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・果物(アボカド、マンゴー、キウイフルーツなど)
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・動物性たんぱく質(卵、肉類、魚など)
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8)
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ビタミンB6・炭水化物
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トリプトファンがセロトニンに合成される過程にはビタミンB6が必要です。9)また炭水化物と一緒に摂取することでトリプトファンの脳内移行が増加し、セロトニン量が増えるといわれています。10)
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ビタミンB6はまぐろ、牛レバー、じゃがいも、バナナなどに含まれます。8)炭水化物は米、パン、パスタ、うどん、穀物類などです。
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コリンエステル
- コリンエステルとは神経伝達物質のアセチルコリンに代表的される化合物です。コリンエステルは胃や腸を介してストレス性の交感神経の活動を抑制し、血圧や気分の改善に働きます。
- ピーマンやニンジンなどの野菜やソバに含まれますが、ナスには多くのコリンエステルが含まれることがわかっています。11)
自律神経に良い影響を与える食事メニュー
大豆製品や野菜に多く含まれるGABA、たんぱく質や乳製品、ナッツ、ごまなどに含まれるトリプトファン。トリプトファンをセロトニンに合成する過程で必要なビタミンB6や脳へ移行をサポートする炭水化物。そしてコリンエステルが豊富なナスなどの組み合わせは、和食メニューにするとバランス良く取り入れやすいでしょう。
- ・主食:発芽玄米など(GABA、炭水化物)
- ・主菜:魚や肉料理など(トリプトファン、ビタミンB6)
- ・汁物:豆腐や油揚げの味噌汁など(トリプトファン、GABA)
- ・副菜:ナスやピーマン、にんじんなどの野菜料理(コリンエステル、GABA)
- ・デザート:バナナやキウイフルーツ(トリプトファン、ビタミンB6)
ナスの味噌炒めや大豆もやしの胡麻和えなど、GABAやトリプトファン、コリンエステルを含む食べ物を使ったレシピを取り入れるのも良いでしょう。
また腸内環境と自律神経系は深く関係しており、自律神経の働きを整えるためには腸内環境を整えることも大切です。発芽玄米には便通をよくする食物繊維が含まれています。味噌や納豆などの発酵食品も腸内細菌叢のバランスを整えるのに役立ちます。
自律神経を整える食生活習慣
食べ物だけでなく、食事のとり方も大切です。朝食からスタートし、規則正しく3食しっかりとりましょう。自律神経に影響をおよぼすような血糖値を急激に上昇させる食べ方も避けましょう。
朝食を食べる
朝に光を浴び、朝食をしっかりとる生活習慣は睡眠と覚醒のリズムを整えて良質な睡眠を促し、自律神経も整いやすくなります。
関連記事:自律神経を整える睡眠対策と適切な睡眠時間
朝食を食べる習慣がない方が朝から複数のおかずを用意するのは大変かもしれません。おにぎり・味噌汁・乳製品や果物のシンプルなメニューから始めてみてがいかがでしょうか。かつおだしは血管を拡張し、末梢の血流が維持されやすくなります。12)味噌汁などの汁物に取り入れられそうですよね。
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朝食メニュー例
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コンビニで買うときのポイント
- コンビニでも玄米やゴマ、おかかや鮭などのたんぱく質を使ったおにぎり、味噌汁は購入できます。レンジで温める野菜がたくさん入ったスープや魚・肉などのおかず、野菜のおかず、チーズやヨーグルト、カットフルーツなども単品で販売されています。買う際には一つの栄養素に偏ることのないよう、組み合わせを工夫してみましょう。
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おかずを先に食べる
- 血糖値の急激な変動は自律神経に作用します。食後の急激な血糖上昇を抑えるには主食の前に副菜、主菜などのおかずを食べるようにしましょう。
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食事の間隔をあけて3食とる
- 間食をとると血糖値が高い状態が続きやすくなり、1食抜いてしまうと食後の血糖値が上がりやすくなります。自律神経に影響をおよぼす血糖値の変動が大きくならないように規則正しく3食をとり、間食は控えましょう。
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バランスのよい食事を3食心がけましょう
- 自律神経に良い影響を与えるGABAやトリプトファン、コリンエステルや、トリプトファンのセロトニン合成をサポートするビタミンB6や脳内移行を促す炭水化物、腸内環境を整える食物繊維や発酵食品などをバランスよく取り入れた食事が大切です。朝食をしっかり食べること、1日3食を規則正しくとること、血糖値の急激な変動を避けることを心がけながら毎日の食事を楽しみましょう。
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- 参考
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1)藤林真美ら,GABA経口摂取による自律神経活動の活性化 日本栄養・食糧学会誌2008:61(3).129-133
2)Utano Nkamura et.al.Dietary Gamma-Aminobutyric Acid (GABA) Induces Satiation by Enhancing the Postprandial Activation of Vagal Afferent Nerves Nutrients 2022, 14(12), 2492
3)農林水産省ウェブサイト お米と健康・食生活
4)大野一仁ら,野菜によるγ-アミノ酪酸の蓄積 愛媛県工業系研究報告 No.45 2007 -
8)文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
9)Faisal Shabbir et al.Effect of diet on serotonergic neurotransmission in depression Neurochemistry International 62(3)2013, p.324-329 - 12)Kenya Kamimura et al.Effective prevention of sorafenib-induced hand-foot syndrome by dried-bonito broth Cancer Manag Res 2018,17(10):805-813