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背中の痛み|自律神経失調症などの原因と対策・予防法を解説

睡眠・ストレス・鬱病

背中の痛み|自律神経失調症などの原因と対策・予防法を解説

執筆者 作業療法士 丹野愛

監修者 整形外科医 森裕展

背中の痛みは脊椎の病気や心臓や血管の病気、うつ病、筋肉の症状のほか、自律神経失調症や姿勢不良など、さまざまな要因によって起こることがあります。腰痛や肩こりばかりでなく、背中の痛みで悩んでいる人も少なくありません。慢性的な痛みは生活の質を低下させる原因にもなり得ます。

本記事では、背中の痛みで考えられる原因や自律神経失調症との関係、対策や予防法をわかりやすく解説します。

実は抱えている人も多い背中の痛み

クリニックに来院される患者様の主訴として腰痛、肩こりと並んで次のような背中の症状もよく聞かれるのが現状です。

  • ・背中の痛み「背中が痛い、背中の左側が痛い、背中の右側が痛い」
  • ・背中のこり「肩から背中にかけてのこり感がある」
  • ・背中の張り「背中が張っている」

上記のような背中の痛み、こり感、張りなどの症状を訴える患者様にレントゲン撮影などの画像検査や診察などを行っても原因が特定できない場合も少なくありません。

原因が特定できる腰痛と特定できない腰痛

そもそも「背中」とは身体のどの部位をいうのでしょうか。「背中はどこですか?」と聞かれたら皆さんはどこを指しますか?「肩と腰の間」「肩甲骨の下あたり」「背骨のあたり」などが回答としては多いかもしれません。

厚生労働省の資料の中では、背中は首の下からお尻の上までの範囲を指しており、肩も腰も含めて「背中」と表されています。1)腰と背中をあわせて腰背部と表現されたり、肩甲骨を含めて上背部と表現されたりもします。

広い範囲を指す部位だけに個人によっても「背中」の範囲の認識が異なると考えられるため、どの部位が痛いのか、症状があるのかを具体的に示すとより的確に伝わるでしょう。

背中の痛みがあるときに考えられる病気や症状

背中の痛みがみられるおもな病気や症状についてお伝えします。

すい臓の病気

胃の裏側に位置するすい臓の炎症(急性すい炎、慢性すい炎)やすい臓がんなどで背中の痛みがみられます。急性すい炎の場合はお腹側から背中側へと突き抜けるような激痛が走り、吐き気や嘔吐もともないます。2)

脊椎に関する病気

強直性脊椎炎は仙腸関節や首から腰にかけての脊椎の靱帯付着部に炎症が生じる病気です。痛みは腰やお尻から始まり、背中全体や首まで広がる場合もあります。3)

そのほか、胸椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、脊椎すべり症、脊椎圧迫骨折などの脊椎に関する病気でも背中の痛みがみられる場合があります。

椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症の詳細

心臓や血管の病気

心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患では胸や左腕、背中に痛みがみられます。4)大動脈解離でみられるのは背中と腰の強い痛みです。ショック症状や脈拍、血圧の左右・上下の差もみられます。5)

こころの病気や不調

うつ病、不安症、身体症状症、パーソナリティー障害、統合失調症などは痛みが出やすい精神疾患です。うつ病の42%に背中の痛みの訴えがあったと報告されています。背中の痛みは、部位別では頭痛58%の次に訴えが多い部位です。(端詰ら,2011)6)

自律神経失調症は、交感神経と副交感神経から構成される自律神経のバランスが乱れることで、さまざまな身体症状が現れる状態です。自律神経失調症の症状の一つとして、背中の痛みやこり、張り、圧迫感などの症状がみられる場合もあります。

筋肉の症状

ぎっくり腰ならぬぎっくり背中や姿勢・動作などでかかる背中への筋肉の負担、血流不良などによる背中の筋肉の張りなどから背中の痛みが生じる場合もあります。

注意が必要な背中の痛み

  • 消防庁による救急受診ガイドでは、次のような背中の痛みがあるときには救急要請を推奨しています。
  • ・突然の痛み、かつ痛みが強くなっている
  • ・胸の痛みをともなう
  • ・足が急にしびれる、だるい感じが強くなっている、足を動かせない
  • ・強い痛みを感じる場所が移動している
  • ・裂けるような痛み
  • ・尿が赤く、排尿時に激しい痛みがある
  • ・便・尿の漏れをともなう
  • ・吐き気、嘔吐、発熱がある
  • 7)
  • また、次のような背中の痛みがある際には内科・救急科への2時間以内の受診が必要とされています。
  • ・長時間ずっと座っていた、または長時間同じ姿勢をとっていた、旅行の後に痛くなった
  • ・痛み止めが効かない
  • ・がんや糖尿病にかかっている、治療中である
  • ・体重が減っている
  • 7)
  • 次の症状をともなう背中の痛みは外科・救急科への2時間以内の受診が必要とあります。
  • ・尿が出にくい、またはトイレに行っても尿が出ない
  • ・しょっちゅうトイレに行く、または排尿時に痛みがある
  • ・お尻・腰から足にかけてひびくような痛みがある
  • ・歩きにくい
  • ・痛みが出る2日程度の間にケガをした、または事故にあった
  • 7)
  • 自律神経が関係する背中の痛みを予防・緩和する方法

  • 自律神経が関係すると考えられる背中の痛みや、ぎっくり背中、姿勢不良や血流不良などから起こる背中の痛みは、ストレスや睡眠不足、生活リズムの乱れなど、複数の要因が関与しています。原因がはっきりとわからない背中の痛みの場合は、次に示すような対策や生活習慣の見直しによって、背中の痛みの予防や緩和が期待できます。

  • ストレッチ

デスクワークなどでの姿勢不良や同じ姿勢をとり続けることによる血行不良が続くと背中の張りやこり、痛みにつながりやすくなります。肩甲骨や脊椎にしっかりと動きを入れ、筋肉の柔軟性を高めて血流を改善しましょう。

姿勢の悪さは背中の筋肉に負担をかけ、痛みを引き起こす原因になります。デスクワーク時の机や椅子、パソコンなどの環境設定や姿勢を見直してみましょう。リフレッシュ方法を取り入れ、定期的に体を動かして長時間同じ姿勢をとらないようにしましょう。

日中の運動は交感神経と副交感神経のバランスを保ち、良質な睡眠を促して自律神経を整えます。自律神経の乱れは痛みに対する過敏さを増し「痛みがあるから動けない」という認知を生みます。さらに筋肉の柔軟性や筋力の低下、血行不良を招き、痛みが増すという悪循環につながります。

背中の痛みの原因として、内科・整形外科疾患や自律神経の乱れが関与している可能性があります。急な痛みが現れた場合には、痛みの特徴をチェックリストで確認し、早めに適切な対応を取ることが大切です。

なかなか治らない背中の痛みは複数の要因が絡んでいるので、運動療法や薬物療法、心理療法などの複合的なアプローチが有効です。慢性疼痛の診療を行っている医療機関への相談も検討しましょう。