【医師監修】自律神経の乱れや生活習慣をセルフチェック!慢性的な痛みや不調の原因も解説
【医師監修】自律神経の乱れや生活習慣をセルフチェック!慢性的な痛みや不調の原因も解説
執筆者 作業療法士 丹野愛
監修者 整形外科医 森裕展
肩こりや腰痛、背中の痛みなどの原因がはっきりしない痛みや不安感、気分の落ち込みなどの不調の背景には、自律神経の乱れや中枢感作が関係している場合があります。生活習慣の乱れも痛みや不調を悪化させる一因となります。不調や痛みの改善につなげるためには、まずは今の自分の心や体の状態に気づくことが大切です。
慢性的な痛みや不調と自律神経や中枢性感作の関連を知り、自律神経の乱れが関係する症状や生活習慣をセルフチェックし、適切な対策で改善を目指しましょう。
自律神経の乱れが原因?体と心のチェックリスト
次のような症状はありませんか?
生活習慣やストレスなどによって、自律神経のバランスの乱れや神経の過敏化、心理的な要因が影響し合い、次のような心や体の不調が現れることがあります。自分に当てはまる症状がないか、まずはチェックしてみましょう。
体と心の症状チェックリスト
体と心の症状チェック計 個 |
出典:厚生労働省 セルフメンタルヘルス1),文部科学省 CLARINETへようこそ 第2章 心のケア 各論2)より作成
チェック結果と受診の目安
- 体と心の症状チェックで1つでも当てはまる症状があり、症状が続く場合や気になる症状がある場合は我慢せずにかかりつけ医や医療機関に相談し、適切な対策につなげましょう。
- 特にいつもと異なる痛みや苦しさがある場合は躊躇せずにすぐに医療機関を受診することが大切です。
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合計チェック数
結果と受診の目安
10個以上
適切な治療が必要です。かかりつけ医、もしくは医療機関に相談し、治療を受けましょう。
5~9個
生活習慣の見直しから始めましょう。症状が改善しない場合はかかりつけ医、医療機関に相談しましょう。
5個未満
生活習慣でできる対策があれば行いましょう。気になる症状や辛いと感じることがあれば放置せずにかかりつけ医、医療機関に相談することが大切です。
- 長引く痛みや疲労についてはこちらもご参照ください。
- 【医師監修】自律神経と痛みの関係|慢性疼痛の軽減方法とは
- 疲労は自律神経の乱れが原因?疲れの正体と疲労解消のポイント
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自律神経の乱れだけじゃない?検査で異常がないのに不調が起こる理由
- 全身のだるさや頭痛、めまい、肩こり、腰痛、背中の痛みといった慢性的な痛みなどの不調があるのに、病院でレントゲンや血液検査を受けても「異常なし」と言われた経験はありませんか?
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はっきりと原因がわからない慢性的な不調は、自律神経の乱れのみの問題ではなく、中枢性感作(CSS)やストレスによる脳や神経の反応などが関係していると考えられています。
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中枢性感作(CSS)とは?
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中枢性感作とは、痛みなどの刺激を繰り返し受けることで、脳や脊髄といった中枢神経が敏感になりすぎた状態です。通常なら痛みを感じないような刺激でも、痛みや不快感として脳に伝わりやすくなり、慢性的な腰痛や肩こり、頭痛、なかなか取れない疲れなどの症状がみられるようになります。3)
中枢性感作(CSS)の原因は、はっきりとはわかっていません。3)末梢および中枢の免疫系の関与、ストレスがかかったときの生体の応答システムである自律神経系や視床下部-脳下垂体-副腎(HPA)系などによって生じる可能性があると考えられています。3)
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中枢性感作と自律神経
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中枢性感作による症状は、痛みに限らず、しびれや不安、感覚過敏などの精神的・身体的な不調として現れることがあります。Yunus(2007)によると、中枢感作でみられる症状の背景の一つとして、関与している可能性が示唆されているのが自律神経系の乱れです。4)
同報告では、線維筋痛症(FMS)、過敏性腸症候群(IBS)、慢性疲労症候群(CFS)、レストレスレッグス症候群(RLS)といった、中枢性感作が関連すると考えられるいくつかの疾患において、交感神経の過活動や副交感神経の機能低下が報告されていると述べられています。4)
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また、交感神経の過活動が中枢感作に関与する可能性がある一例として、Yunus(2007)は、外傷や手術後に発症し、通常では考えられないような強い痛みが持続する複合性局所疼痛症候群(CRPS)を挙げています。複合性局所疼痛症候群(CRPS)では、本来痛みを伴わない刺激でも痛みを感じたり、痛み刺激が繰り返されることで痛みが増強したりする現象がみられるのが特徴です。4)
さらに、Martinez-Lavin(2001)も、中枢性感作が関与する線維筋痛症患者に、持続的な交感神経の過活動がみられると報告しており、交感神経の異常は、慢性痛などの痛みだけでなく、不安や睡眠障害、血流障害など多様な症状にも関与している可能性があると述べています。5)
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自律神経の乱れを招く生活習慣セルフチェック
- 中枢性感作と自律神経の乱れは関連している可能性があり、影響し合うことで、さまざまな不調や慢性的な症状を生じやすくなると考えられています。日々の生活を振り返り、自律神経の乱れを招きやすい生活習慣を送っていないか確認してみましょう。
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生活習慣チェック
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朝起きる時間や寝る時間が日によってばらばらである
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夜更かしが習慣化している
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スマートフォンやPCを長時間使用している
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運動する習慣がほとんどない
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日中、屋外に出て日光を浴びる時間がほとんどない
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食事の時間が不規則である
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カフェインやアルコールを頻繁に摂取している
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ストレスを感じることが多く、リラックスする時間が少ない
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常に忙しく、休息を取ることが難しい
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夜間に眠る部屋が、音や光、温度・湿度などの環境面で快適ではない
- 出典:厚生労働省 セルフメンタルヘルス1)より作成
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上記に一つでも当てはまるものがあれば、生活習慣を改善するためにできることから取り組んでみましょう。
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たとえば「30分早く寝る」「寝る前はスマートフォンのロックをかける」「1日に飲むコーヒーを1杯減らす」「10分外に出て散歩する」「寝る前の20分はリラックスできる時間を過ごす」などの小さなことでも構いません。
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これならできそうかなという目標を立てて、まずは一歩前に進むことが大切です。
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自律神経の乱れや生活習慣をチェックし、慢性的な痛みや不調の対策を
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自律神経の乱れや中枢性感作は、不調の原因がはっきりしないまま続く、慢性的な痛みやだるさ、疲労感、気分の落ち込みや不安感などに関わっている場合があります。不調は、生活習慣の見直しで改善が期待できるケースも少なくありません。
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まずは今の自分の状態に気づくことが大切です。チェックリストで自律神経の乱れが関係する症状がないかを確認し、生活習慣のセルフチェックで日頃の過ごし方を振り返ってみましょう。
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当てはまる生活習慣があれば、できるところから取り組んでいくことが大切です。それでも症状が改善しない場合には、検査で異常がみつかりにくい痛みや不調に対応している医療機関へ相談することも一つの方法です。不調や痛みをそのままにしていると慢性化してなかなか治らない状態に陥る場合もあります。原因に合わせた複数のアプローチを組み合わせて不調の改善を目指していくことが重要です。
- 3ヶ月以上続く肩こり、腰痛、背中の痛みは慢性疼痛かもしれません。慢性疼痛でみられる症状や対策についてはこちらもご参照ください。
- 治らない痛み(慢性疼痛)専門外来
- 痛みのサイクルを断ち切る!慢性疼痛の運動療法ガイド
- 執筆者
監修者
- 参考
- 1)厚生労働省 セルフメンタルヘルス
- https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000881325.pdf
- 2)文部科学省 CLARINETへようこそ 第2章 心のケア 各論
- https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/003.htm
- 3)「井上 雄一ら.厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究).種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割の解明とそれによる患者ケアの向上.平田 幸一.平成29(2017)年度総括研究報告書」(厚生労働科学研究成果データベース)(https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/26627)(2025年4月1日に利用)
- 4)Muhammad B Yunus Fibromyalgia and overlapping disorders: the unifying concept of central sensitivity syndromes Semin Arthritis Rheum
. 2007 ;36(6):339-356 - https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17350675/
- 5)M Martínez-Lavín Is fibromyalgia a generalized reflex sympathetic dystrophy?Clin Exp Rheumatol
. 2001;19(1):1-3. - https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11247309/