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自律神経と血流の関係は?血流を改善する方法も解説

睡眠・ストレス・鬱病

自律神経と血流の関係は?血流を改善する方法も解説

執筆者 作業療法士 丹野愛

監修者 整形外科医 森裕展

「自律神経と血流は関係があるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?血管の収縮は自律神経がコントロールしており、自律神経のバランスが乱れると血流や血圧も影響を受けます。この記事では、自律神経と血流の関係、さらに血流を改善する具体的な方法についてもご紹介します。

自律神経と血流の関係とは

自律神経は交感神経と副交感神経から成る末梢神経です。両者はバランスを取りながら働いており、心拍、呼吸、血流、発汗、消化、体温調節、唾液分泌、排泄などの私たちが生きていくために必要不可欠な身体の器官の働きを無意識に調整しています。

血管の収縮は交感神経によってコントロールされます。交感神経が優位になると心拍数が上がり、血管は収縮して血圧が上がります。すぐに闘える・逃げられる身体の態勢をとるために筋肉への血流が増えて消化器官への血流は減少している状態です。

一方、副交感神経が優位になると心拍数が減少し、心臓から送り出される血流が少なくなるため血圧が下がります。脳や消化器官では血管が拡張して血流量が増えるので、脳に酸素や栄養素が供給されたり消化や排泄が促されたりします。

自律神経の乱れによる血流への影響

交感神経は日中活動時や緊張・興奮状態時に優位になり、副交感神経は睡眠中リラックスしているときに優位になります。

交感神経が亢進した状態での血流への影響

しかし、年を取るにつれて副交感神経の働きは低下し、交感神経が優位な状態になります。さらに次のようなときは交感神経が過剰に働きやすい状態です。
・仕事や家庭、人間関係のストレスがかかる
・生活リズムが乱れる(食事や睡眠が不規則になる)
・更年期などホルモンバランスが乱れる

交感神経が亢進した状態が続くと、血管が収縮し続けて高血圧になるばかりか、血管に負担がかかり動脈硬化を引き起こす恐れもあります。脳や消化器官の血流が増えにくいので、脳の疲れや胃腸の不調もみられやすくなるでしょう。

「忙しくて休めていない」「緊張状態が続いている」ときには次の方法がおすすめです。
・深呼吸や瞑想の時間を取り入れる
・好きな音楽を聴きながらゆったり過ごす
・ストレスに感じることを避ける

交感神経が働かないときの血流への影響

交感神経が働かない状態が続くと、副交感神経と交感神経とがうまく切り替わらなくなり、起立性低血圧を起こして活動に参加しにくい状態となってしまいます。1)

  • 日中の活動や適度な緊張感を持つ機会は自律神経がバランスを保って働くためにも必要でしょう。「日中に活動の機会がない」ときは次のような活動を行ってみてはいかがでしょうか。
    ・趣味や興味のある活動をする
    ・好きな場所に出かける
    ・散歩・ウォーキング

「自律神経の働きをサポートするウォーキング方法」についてはこちらもご参考ください。ウォーキングに適した心拍数や取り入れるべきアイテム・コースについてお伝えしています。
参考記事:https://www.moriseikei.or.jp/blog/jiritusinkei-walking/

血流改善が期待できる3つの方法

血管は収縮と拡張を繰り返すことで弾力が保たれています。血管が拡張する機会を設けることも血管の健康を保つためには重要です。血管拡張を促す「入浴」「運動」「ストレッチング」の3つの方法についてお伝えします。

入浴する

  • 入浴すると血管が拡張し、血流改善が期待できます。熱すぎるお湯や水位が高くなると体に負担がかかるのでぬるめの温度、少なめのお湯がよいでしょう。また炭酸ガス入りの入浴剤は血管拡張を促し血流を増加させる作用がありますのでぬるめのお湯に入っても身体の芯まで温まりやすくなります。
  •  
  • 入浴時のポイントを以下に示します。
    ・40度以下のぬるめのお湯
    ・お湯は浴槽に少なめにはる
    ・炭酸ガス入りの入浴剤を使う
  • 2),3)
  • 運動を継続する

  • 運動によって生成される一酸化窒素(NO)は血管の壁の筋肉を弛緩させ、血管を拡張して血流量を増加させます。ハンドグリップ運動や自転車こぎ運動で血液中の一酸化窒素(NO)レベルが増加することが報告されています。4)

    また週4回・3週間にわたる足首の底背屈運動の繰り返しでも血管拡張が促され血流量が増えるという結果がみられました。5)

    血管を拡張する運動として下記3つの運動が挙げられます。
    ・ハンドグリップ運動(手を開いたり握ったりする運動)
    ・自転車をこぐ運動
    ・足首の底背屈運動(つま先の上げ下げ運動)

    上記以外にもリズミカルな運動は自律神経を整えるとされています。自律神経を整えるリズミカルな有酸素運動についてはこちらもご一読ください。
    参考記事:https://www.moriseikei.or.jp/blog/jiritsushinkei_unndoubusoku/

ストレッチングを行う

30秒の静的ストレッチング(反動をつけずに伸ばした状態で静止するストレッチ)を1~3回反復することによって、筋肉を伸ばした部位の血管拡張および血流増加が認められたとあります。6)

足には大きな血管が通っています。大腿動脈、膝窩動脈、後脛骨動脈が通る部位のストレッチング方法を動画でわかりやすくお伝えしますのでご覧ください。

・大腿動脈が通る足の付け根から太ももにかけてのストレッチ
https://www.youtube.com/watch?v=0xaELvbmV0c

・膝窩動脈が通る膝の裏のストレッチ
https://www.youtube.com/watch?v=LSLmXu4Kpv0

・後脛骨動脈が通るふくらはぎのストレッチ
https://www.youtube.com/watch?v=M7BbZue0qBA

血流を改善し自律神経の乱れも改善

交感神経優位の状態が続くと血管の収縮も続くため、血管の壁に負担がかかり、高血圧や動脈硬化のリスクにもなります。まずは交感神経優位の要因であるストレスを避けることが大切です。

副交感神経の活動が高まるような深呼吸や瞑想などのリラックスできる時間を持つのもよいでしょう。血管は収縮と拡張を繰り返して柔軟性が保たれます。血管が拡張する機会をつくると血流も改善します。

身体に負担を書けない入浴、手や足首の運動や自転車こぎ運動の継続ストレッチングなどの血管を拡張する方法もおすすめです。血流を改善し、自律神経のよいバランスをめざしましょう。

※すでに高血圧や動脈硬化などで治療を受けている方、身体に痛みがある方は主治医に実施してもよい運動の頻度やきつさなどを事前に確認しておきましょう。

執筆者

作業療法士 丹野 愛

監修者

参考

1)美和千尋ら 足浴時の自律神経機能の変化と加齢の影響 日温気物医誌2015 78(2)130-137
https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki/78/2/78_130/_pdf/-char/ja
2)日本浴剤工業会 入浴剤の効果とメカニズム
https://www.jbia.org/knowledge3.html
3)日本浴剤工業会 入浴によって得られる作用
https://www.jbia.org/knowledge4.html
4)須藤僚也 運動機能における一酸化窒素(NO)の役割NOを増やすことで運動機能を高められるか? 化学と生物 2023 61(8), 2023
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/61/8/61_610803/_pdf/-char/ja
5)大森芙美子,清水靜代 血管拡張能を高める運動トレーニングの条件 デサントスポーツ科学26 203-211
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/db/seeds/descente26_23_ohmori.pdf
6)永澤健 ストレッチングがもたらす血管機能改善効果の解明と新しい動脈硬化予防法の開発 科学研究費助成事業 研究成果報告書 平成27年6月22日現在
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-24700713/24700713seika.pdf