家でできる膝の痛み軽減ストレッチ紹介
家でできる膝の痛み軽減ストレッチ紹介
執筆者 理学療法士 宇都宮雅人
監修者 整形外科医 森裕展
膝の痛みとその原因理解
激しい運動をしたり、長時間の立ち仕事をしたりすると膝に負担がかかることがあります。特に年齢を重ねるごとに関節の柔軟性が低下し、膝痛の悩みを抱える方も増えてきます。膝の痛みはさまざまな原因によって発生します。こちらのページでは、今までのリハビリ現場の経験を元に、膝の痛みへ対して効果が出やすいストレッチをいくつか紹介させていただきます。
膝関節の構造とストレッチの重要性
膝関節は大腿骨、脛骨、膝蓋骨といった骨と、それらをつなぐ靭帯、軟骨、関節包などから成り立っています。 正しい機能を保つためには、これらの各部位が適切に協調して動く必要があるのです。しかし、日常生活での不適切な動作や、スポーツなどの激しい活動により、関節周りの筋肉のバランスが崩れたり、関節に過度な負担をかけたりすることがあります。ストレッチにより筋肉の柔軟性を保ち、膝関節への負担を軽減し、膝の痛みを和らげたり予防したりする効果があるのです。
筋肉の不均衡が引き起こす膝痛
筋肉のバランスは膝の健康に密接に関係しています。特に大腿四頭筋やハムストリングスといった膝周辺の筋肉群に問題があると、膝への負担が偏り、関節炎や半月板損傷などの膝痛を引き起こすリスクが高まります。また、日常生活で特定の筋肉に負担をかけ続けることを避けることも大切です。
膝の痛みの一般的な原因と予防策
膝の痛みを引き起こす原因としては、怪我やオーバーユース、加齢による変性などが代表的です。加齢による変形性関節炎は、軟骨がすり減ってしまう病態であり、その結果として痛みが生じます。また、スポーツ選手に多い十字靱帯の断裂や半月板損傷も重要なポイントです。これらの予防策としては、適切なストレッチや筋トレの実施、正しい姿勢での日常動作、体重管理などが挙げられます。膝に余計な負担をかけないためにも、これらの対策を意識して日々の行動に移していくことが重要です。
膝痛予防のための日常習慣
膝の痛みは、生活習慣に密接に関わっています。日常的な習慣を少し変えるだけで、膝痛予防に大きな差が出ることもあるのです。たとえば、長時間同じ姿勢でいないように心がける、歩く時の姿勢を意識する、適度に膝周りの筋肉を動かすことで柔軟性を保つなど、実は多くのポイントが存在します。これから紹介する習慣を日々の生活に取り入れることで、膝への負担を減らしながら痛みの予防につなげることができます。
正しい姿勢を保つ
立ち姿勢や歩行時の膝の使い方は、膝にかかる負担の大きさを大きく左右します。正しい姿勢を意識すれば、膝に不要なストレスをかけずに済みますから、膝の痛み予防につながります。試しにおもいきり猫背にして頭を前に突き出したり、反り腰の状態で頭を後ろに突き出したりした状態で歩いてみてください。膝の裏や太ももの前側の張り感が変わってくると思います。わずかな姿勢のズレであっても、日常生活の積み重ねで小さな負担が蓄積し、痛みとなって現れる場合があります。
膝周囲の筋肉を柔軟に保つ
膝の柔軟性を保つためには、日々のストレッチが有効です。膝周りの筋肉、特に大腿四頭筋やハムストリングスなどは、緊張すると膝へ負担を増加させる直接的な原因になります。そのため、これらの筋肉を定期的に伸ばし、しなやかさを保つことが重要です。ストレッチは、テレビを見ながらでも、ちょっとした空き時間にでも手軽に行えます。無理なく痛みを感じない範囲で行い、日々の習慣として取り入れることで、筋肉の柔軟性は徐々に改善していきます。筋肉が疲労しているときには、無理をせずに筋肉に十分な回復時間を与えることも忘れないでください。
日常動作で膝を守るコツ
毎日のちょっとした動作が、実は膝を守ることにつながります。 例えば、重たい荷物を持つときは、膝の痛い側の手で持つ法が、負担が少ないといわれています。 階段では、登るときは痛くないほうの足を先に上げ、その隣に痛いほうの足を持ってくる。降りるときは痛いほうの足を先に下し、痛くないほうの足をその隣に持ってくる(二足一段昇降)という方法で膝の負担を軽減することが出来ます。 正座や胡坐、敷布団をはじめとした床上での生活も、膝への負担が増加する要因の一つとなります。立ち上がりや座り込みの際に膝関節を大きく曲げ伸ばしする必要があり、強い力が必要となるからです。椅子やベッドを利用することで負担を減らすことが出来ます。
基本の膝痛予防ストレッチ
日常生活の中で、ときどき感じる膝の不調は、放っておくと将来的なトラブルにつながることがあります。しかし、基本的なストレッチを行なうことで、膝痛の予防を行うことが出来ます。ストレッチは、膝周りの筋肉や靭帯を柔軟に保つことで関節にかかる負担を減らし、健康な膝の維持に寄与します。家で簡単にできるストレッチを知っておくことは、膝の痛みを感じる人はもちろん、痛みを予防したいと考えている方にとっても有益なのです。
膝を曲げやすくするストレッチメニュー
膝を曲げやすくするためのストレッチポイントは、膝蓋骨(膝の皿)と大腿四頭筋(前もも)の筋肉です。膝蓋骨の柔軟性が低下すると、膝を曲げる動作、伸ばす動作のどちらにも負担がかかります。動画を確認しながら伸ばしてみてください。
膝蓋骨
大腿四頭筋
膝を伸ばしやすくするストレッチメニュー
膝を伸ばしやすくするためのストレッチポイントは、ハムストリングス(裏もも)です。この筋肉が硬ければ、膝や腰にも影響をあたえます。
ハムストリングス
効果的なストレッチを行うためには
ストレッチを行うにあたっての効果を最大限に得るためには、適切な時間と回数が重要です。一般的に、一つのストレッチにつき20〜30秒ほど保持し、その動作を1日に3回程度繰り返しましょう。 また、筋肉がリラクゼーションしていない状態でストレッチをしても効果が出にくいので、膝回りや伸ばしている筋肉、身体全身の余分な力を抜くイメージで行うとさらに効果的なストレッチが行えます。 無理をせず、自分が快適に感じる範囲で継続することが、膝痛予防につながるでしょう。
膝以外の関節に目を向ける
日常生活での膝の痛みを軽減するために、専門家が着目すべき点は他にもあります。それは膝以外の関節、特に股関節や足関節、体幹です。これらの部位がなぜ膝の痛みに関係するのか?以下の項目で説明させていただきます。
膝と足関節の関係
膝と足関節は機能的に非常に密接な関係にあります。実は、歩く時や走る時、階段の上り下りやしゃがみ込み、立ち上がりの動作等、日常生活における様々な動きで、足関節の柔軟性が求められます。足関節の柔軟性が低下している場合、これらの動きを行う際に、膝回りに余分な動きや緊張が発生します。それが膝に負担をかけることに繋がります。
膝と股関節の関係
膝と股関節の関係もまた、非常に重要です。股関節の硬さや筋肉のバランスの悪さは、膝に直接的な負荷をかける要因になりえます。股関節も足関節と同様、様々な日常生活で機能することを求められます。特に歩行時に足を振り出す位置や、踏み込んだ時に身体全体を支える機能が重要で、それが低下してくると、膝の負担に繋がりやすいです。
膝と体幹の関係
体幹の安定性は、膝の健康に間接的ながらも大きな影響を及ぼします。体幹が不安定であると、立位や歩行時のバランスが保たれにくくなり、結果的に膝に不必要なストレスがかかりやすくなります。また、膝が痛いと、無意識のうちに姿勢を崩してしまいがちですが、これがさらに体幹の不安定性を招き、悪循環に陥ることもあります。体幹の柔軟性を高めるストレッチは、姿勢を改善させる効果があり、それが歩行などの動作のしやすさに繋がり、結果的に膝の負担が軽減します。
レベルアップ!応用ストレッチメニュー
先ほど説明させていただいた通り、股関節や足首、体幹の柔軟性は、膝の健康を保つうえでとても重要です。膝回りのストレッチだけでなく、その他の部位のストレッチメニューを取り入れることで、より膝への負担を軽減することが可能になります。今回は、膝の痛みを抱える方におすすめしたい、足首、股関節、そして体幹を対象にしたストレッチメニューを紹介します。これらのストレッチを効果的に実施することで、膝への負担軽減効果が期待できます。
膝の痛みに関係する関節のストレッチ
膝の痛みと関係する足関節の機能で重要とされる最も基本的な動きは「背屈」と言われる動きです。これは足の甲が脛に近づくような動きです。背屈のためのストレッチポイントは腓腹筋です。
腓腹筋
膝の痛みに関係する股関節のストレッチ
股関節には、筋力や柔軟性を含め様々な機能が要求されます。ここでは総合的な股関節の柔軟性を向上させるストレッチ、歩行時に身体を安定させるために重要な臀部の筋肉のストレッチを紹介させていただきます。ストレッチポイントは内転筋、大殿筋です。
内転筋
大殿筋
膝の痛みに関係する体幹のストレッチ
体幹の柔軟性は膝の痛みを軽減する上で重要な要素です。少し想像しにくいかもしれませんが、歩行時には体幹に捻じれの動きが生じます。この動きに問題が出ると、スムーズな重心移動が制限され、膝への負担となります。 ここでスムーズな重心移動のための体幹をねじるストレッチを紹介させて頂きます。
体幹の回旋
さいごに
最後まで読み進めていただき、ありがとうございました。皆様の膝の負担軽減を真剣に考えて、記事を作成しました。実際のリハビリ現場で使用する動作指導やストレッチ、膝への負担の考え方を元にしています。
長引く痛みに悩まされている方
こちらで紹介した解決方法は、膝の痛みへのアプローチの一例に過ぎません。個々の体質や痛みの原因は人それぞれ異なりますので、ご自身で試してみても解決しない場合は、ぜひ一度当院を受診してください。医師による診察、理学療法士の問診や検査を通して、ストレッチや筋力トレーニング等を含んだ、適切な治療法を見つけることが出来ます。
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