TOPへ

ブログ

デスクワークが関係?ひどい腰痛のときに考えられる病気

クライシス・ペイン

デスクワークが関係?ひどい腰痛のときに考えられる病気

デスクワーク 腰痛

執筆者 作業療法士 丹野愛

監修者 整形外科医師 森裕展

リモートワークが増え、デスクワークによる腰痛がひどくなっている方も多いのではないでしょうか?腰痛は最初の対応を誤ると、長く痛みに悩まされることもあります。そのため、早期の対策が重要です。

本記事では、デスクワークによる腰痛がひどくなったときに考えられる原因と受診すべき腰痛について説明します。ひどい腰痛の原因や受診すべき目安を知って、適切な対処をとれるようにしましょう。また、腰痛が長引いたときに考えられる慢性腰痛(慢性疼痛)についても理解し、腰痛改善に向けて必要な対策も知りましょう。

 

デスクワークで腰痛がひどいときに考えられる病気

診察やレントゲンなどの画像検査によって原因が特定できる腰痛は特異的腰痛と言います。特異的腰痛は腰痛全体の15%に当たります。1)(図1参照)

ひどい腰痛時に考えられる病気について説明します。

デスクワーク 非特異性腰痛

図1 腰痛の原因

 

腰椎椎間板ヘルニア                                                         

突然の腰痛やお尻の痛み、しびれがみられ、とくに重いものを持ち上げるときには痛みやしびれが強くなります。足全体にしびれが広がったり、足に力が入りにくくなったりすることもあります。

 

仰向けに寝て膝を伸ばした状態の患者の足を検査者が持ち上げ、腰やお尻の痛み、しびれが出た場合には腰椎椎間板ヘルニアの可能性があるサインです。椅子に浅く腰かけた状態から膝を伸ばしたまま足を上げることでセルフチェックを行えます。2)(図2参照)

ヘルニア 検査方法

図2 腰椎椎間板ヘルニアの検査方法(下肢伸展挙上テスト)

腰椎椎間板ヘルニアの詳しい解説はこちらをご確認ください。

 

腰部脊柱管狭窄症

背筋を伸ばした状態で立ち続けているときや歩いているときに足の痛みやしびれがみられます。自転車に乗っているときや座っているときなど、前かがみの姿勢では痛みが和らぎます。

これは加齢により、腰の骨の変化が起こり、腰の神経が圧迫されて起こる症状です。歩いているときに痛みのために立ち止まってしまい、前かがみになって休憩すると、再び歩けるようになるのは腰部脊柱管狭窄症で特徴的にみられる歩行です。                           

 

腰部脊柱管狭窄症の詳しい解説はこちらをご確認ください。

 

坐骨神経痛                                                     

坐骨神経痛は一つの病気ではなく、お尻から太ももの裏や外側にかけて痛みが出る症状です。腰から足にかけて走る坐骨神経痛が何らかの要因により、圧迫されることで起こります。

 

腰椎脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアのほか、仙腸関節障害、梨状筋症候群なども坐骨神経痛の原因となる病気です。

 

坐骨神経痛の詳しい解説はこちらをご確認ください。

 

仙腸関節障害                                                                  

骨盤と脊椎をつなぐ仙腸関節が炎症を起こしたり、機能が不安定になったりすることで、腰やお尻に痛みが出ます。特に、長時間の座位や立位、重い物を持ち上げる動作などで痛みが悪化することが多いです。

 

痛みは腰だけでなく、お尻や太ももの後ろにも広がることがあります。高齢者だけでなく、若年層でも発症することがあり、正しい診断と治療が必要です。

 

仙腸関節障害の詳しい解説はこちらをご確認ください。                                                   

 

その他の病気                                                                   

脊椎腫瘍などのがんの脊椎転移、感染性脊椎炎、大動脈瘤や尿路結石などの内臓疾患による腰痛は腰痛全体の1~2%に見られます。1)                                    

 

デスクワークによる腰痛?このような腰痛はすぐに受診を

危険

次のような腰痛の場合には直ちに受診(今すぐ救急車等で病院に受診)、もしくは2時間以内の受診が必要です。我慢せずに受診しましょう。

 

直ちに受診(今すぐ救急車等で病院に受診)

・痛みが強くて動けない。自力で病院を受診できない

・突然腰痛が起こり、痛みが強くなってきた

・強く痛む箇所が移動する

・足が急にしびれてきて、足がだるい、足を動かせない

・赤い尿が出た、尿をするときに激しく痛む、便や尿が漏れる。

3

2時間以内に受診

・尻もちをついた後など、ケガの後に痛くなった

・重いものを持つなど、痛みが出るきっかけがあった

・腰から足へひびく痛みがある

・歩きにくい

・痛み止めを飲んでも痛い

・2日ぐらいの間に、ケガをした、または事故にあっている

・発熱、吐き気、嘔吐、尿が出にくい、がんや糖尿病にかかっている・治療中である

3

 

原因のわからない腰痛も多い

レントゲン検査などの画像検査を行っても原因がわからない腰痛は、腰痛全体の約85%と報告されています。1)(図1参照)

 

強い腰痛がみられるぎっくり腰も非特異的腰痛です。ぎっくり腰は下に置いてあったものを持ち上げる、腰をひねるなどの動作時に起こりやすく、腰椎周辺の組織が傷ついて起こります。ぎっくり腰などの腰痛が発生したときには、適切な治療をおこなえば、短期間で腰痛は改善します。しかし、一旦よくなっても、再び腰痛が出てきたり、よくなったりを繰り返すケースも多いのが特徴です。

 

原因の特定できない腰痛は、不安や抑うつ、精神的なストレスも関係しています。4)

 

精神的ストレスと腰痛の関係についてはこちらでも詳しく説明しています。

 

3ヶ月以上続く原因のわからない腰痛は慢性腰痛の可能性

デスクワーク 腰痛

腰痛に悩む方のほとんどが検査をしてもわからない非特異的腰痛です。椎間関節、仙腸関節、背筋などの組織のいずれかから痛みが出ているとされますが、部位を断定する検査方法はなく、明確な原因はわかりません。

 

世界保健機関(WHO)によると、病気や明確な原因によらない3ヶ月以上続く腰痛(慢性腰痛)は、そのほとんどが非特異的腰痛であると説明しています。また、慢性腰痛は、身体的、精神的、社会的な要因の組み合わせの対応が必要なため、個別ケアが必要なことを示しています。5)

 

慢性腰痛(慢性疼痛)のリハビリテーション、運動療法についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、興味のある方はあわせてご覧ください。

 

デスクワークによる腰痛がひどいときは整形外科受診を

デスクワークをしていてみられるひどい腰痛は、腰椎の病気など、原因が明確な場合もありますが、ほとんどの場合は原因がはっきりしない非特異的腰痛です。

 

非特異的腰痛は慢性腰痛になりやすく、慢性疼痛のケアには個別の対応が必要とされています。

 

守口市の森整形外科リハビリクリニックでは、3ヶ月以上続く慢性疼痛(治らない痛み)に対する診療および個別のリハビリテーションを行っています。お一人お一人の腰痛に合った治療をご提案しますので、腰痛にお悩みの方はご相談ください。

 

参考URL

1)R A Deyo, J Rainville, D L Kent  What can the history and physical examination tell us about low back pain?  JAMA. 1992 268(6)760-765.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1386391/

2)腰痛対策|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d_0001.pdf

3)緊急度判定プロトコルVer.1救急受診ガイド(家庭自己判断)|消防庁

https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento121_03_kateiprotocolv1.pdf

4)FRYMOYER, JOHN W et al Epidemiologic Studies of Low-Back Pain Spine 1980 5(5) 419-423 https://journals.lww.com/spinejournal/abstract/1980/09000/Epidemiologic_Studies_of_Low_Back_Pain.5.aspx

5)releases guidelines on chronic low back pain|WHO

https://www.who.int/news/item/07-12-2023-who-releases-guidelines-on-chronic-low-back-pain

 

執筆者 作業療法士 丹野愛

作業療法士 丹野 愛

監修者 整形外科医 森裕展

院長 森裕展 監修者

森整形外科リハビリクリニック森整形外科リハビリクリニック